
最近、名刺入れの内側がボロボロになっていることに気づいた。 知らずに使い続けていたが、名刺交換の際に気づいた人もいたかもしれない。今更ながら恥ずかしい。
そこで、新しい名刺入れを探すことにした。 まず向かったのは阪急百貨店。 なぜか引き寄せられるように、あるお店に立ち寄った。
店員さんが「何かお探しですか?」と声を掛けてくれる。 「名刺入れを探しています」と答えると、嬉しそうに色とりどりの名刺入れを紹介してくれた。
赤、オレンジ、黄色、緑、深緑、白、青、群青、グレー、黒、薄紫… 10種類以上のカラーが美しい革製の名刺入れが並んでいる。 ロゴや模様は一切なく、シンプルなデザインが際立っている。
「どのお色がお好みですか?」
私は、好きな緑色を手に取った。 縁には漆黒の溶剤が丁寧に塗られており、上品で落ち着いた雰囲気。 心が自然と惹かれる。
ほかの色も試してみる。 …違う。 やはり、心が求めているのはこの緑の名刺入れだ。
「緑色は人との良いご縁を結ぶ色と言われていますよ」と、店員さんがにっこり微笑む。
へえ…そうなんだ。
値札を見る。
“やはりそうか、高い…予算オーバーだ”
少し考える時間を置くことにし、笑顔の店員さんに見送られながら店を出た。 ブランド名は「ヴァレクストラ」。聞き慣れない名前だった。
そのまま同じフロアをぶらぶら歩きながら考える。 あの美しい緑色の名刺入れ。 人とのご縁を大切にしたいという自分の想い。
……やっぱり、あれにしよう。
再びお店に戻り、購入を決意。
このお店の店員さんたちは、接客していないときも皆、口角が上がっている。 その雰囲気が、なんとも心地よい。
久しぶりの買い物。 高揚感に包まれながら帰宅。
しかし、じわじわと後悔の気持ちが湧いてきた。
「高価な買い物を衝動買いしてしまった。 これからフリーランスの仕事が上手くいかなかったら… もったいなかったかな。」
自分を慰めるように、「まあ、財布代わりにもなるか」と考えてみる。
…待てよ。
この名刺入れを手にしたとき、どんな気持ちだったか?
しっくりくる。 上品で高級感がある。 自分を大切にしている感覚。
やっと、こういう名刺入れを持てるようになったんだ。
もがき苦しんできた日々を思い出す。
「自分、頑張ったよね。」
そして、店員さんの言葉を思い出す。 「緑色は、人とのご縁を結ぶ色」
そうだ。 これからも自分を大切にして、ご縁のある方を大切にしたい。
もしかすると、この名刺入れは単なる“名刺入れ”ではなく、 私の価値観や人生の方向性を映し出すものなのかもしれない。
この名刺入れを使うたびに、 「落ち着き」「上品さ」「ご縁を大切にする」ことを思い出せたら、 それだけで買った意味が深まる。
惹かれるものには意味がある。
ちなみに、ヴァレクストラはイタリア・ミラノに本社を置くファッションブランド。
デザイン哲学は「クワイエット・ラグジュアリー(静かな贅沢)」。
派手なロゴや装飾を排し、 控えめながらも深い美しさを追求するスタイル。
熟練した職人による漆黒のコバ加工が特徴だという。
なるほど、納得のお品。
また、名刺入れには「相手の名刺を置く座布団」という考えがあるらしい。
相手からいただいた名刺は、その人そのもの。
大切な方に座っていただくための良い座布団を用意する。
そう思うと、この名刺入れがますます愛おしくなった。
これからも、この名刺入れが導いてくれるご縁を大切にしていこう。


