
経験が織りなす豊かなこころ
「こころを白くする!」
わたしが中学生の頃、父から将来の目標は何か?と問われて答えた言葉です。
つい口をついて出た言葉でした。
父は、え?何?と意外そうな顔をして、どういう意味かと聞き返しました。
しかし、わたしは答えられなかった。
自分でもわからなかったのです。
わたしは、今の自分に質問してみました。
「今なら何と答えるの?」
この質問は、わたしの洞察を深めました。
わたしは、父との対話のシーンを詳細に思い出してみました。
静かな部屋で、ゆったりと椅子に座り、目を閉じます。
そして、ゆっくりと思い出します。
いつ、どこで、そばにだれがいたか、近くに何があったかなど。
すると、鮮明に当時の記憶が蘇りました。
そうそう、わたしは中学一年生です。
午後昼下がり。
父の書斎にいます。
私は書斎のドアを背にしてに正座しています。
右隣に弟が正座しています。
父は私と弟の目の前に正座しています。
父が「お前の今年の目標は何か?」とわたしに質問します。
私は「こころを白くする」と答えます。
父が少し苦笑いしながら「どういう意味か?」と聞き返しました。
その瞬間です。
ああああ!と涙がこみ上げてきました。
そうか!そうだったのか…。
こころの謎の一部がほどけたような感動です。
わたしにとって、「こころを白くする」とは、
具体的にいろんな経験をして、
辛いこと、悲しいこと、恥ずかしいこと、喜んだり、疑ったり、後悔したり、失望したり、絶望したり、感動したり、感謝したり、自分を責めたり、楽しんだり…。
いろんな感情を味わい尽くして、心を豊かにすること。
自分が知らない自分を知って、認めて、受け入れていくこと。
こころを白くするとは、いろんな経験をして喜ぶこと。
歓喜することだと。
中学生のころ、なぜか口をついて出た言葉の意味が、
時を経て、年齢を重ねて、経験を積み上げて、
やっとわかった。
老いるとは、こころが豊かに成長するために必要なことだと思うのです。


